843 スカイハイ

84301 スカイハイ 1〜4
第一死盗む女45:52
  ある日、河川敷で一人の女性の変死体が発見される。被害者の名前は関川法子。ごく普通のOLとして結婚し、子供も授かり、幸せに暮らしていたはずの彼女にいったい何が起きたというのだろうか…。
 気がつくと法子は葬式の場にいた。しかし、誰も自分のことに気づいてくれない。号泣する夫・勝や親友・美里。「あたし、死んだの…?」。
 法子は不思議な門の前に立っていた。一人の女性が近づく。「ようこそ“怨みの門”へ」。不思議なムードを漂わせる彼女の名前はイズコ。ここの門番だと言う彼女によると、不慮の事故や殺された人間が来るのが、この “怨みの門”だという。さらにここを訪れた者には“三つの選択”が与えられるという。
「一つ、死を受け入れて天国に旅立ち再生の準備をする」
「二つ、受け入れずに霊となって現世をさまよう」
「三つ、現世の人間を一人、呪い殺す」
 まだ自分が死んだ自覚がない法子に、イズコは彼女の現世での記憶をたどらせる。勝との出会い、幸せな日々、そして二人の間に出来た新しい命…。しかし、それと時を同じくして、法子は執拗な嫌がらせを受けるようになっていた。
 ある日、美里に呼び出された法子。そこで彼女から衝撃の告白を受ける。「幸せそうなあんた見てたらさ、なんだか急にぶっ壊したくなってさ」。法子は思い出した。自分を殺したのは美里…。そう、すべては“嫉妬”から生まれた悲劇だったのだ。
 親友の裏切りを思い出し戸惑う法子。一方、まるでもう法子のことなど忘れてしまったかのように接近していく勝と美里。「私の幸せが盗まれていく…」。法子は決意を固めた。
 一年後、美里は勝との間に出来た子供を産むために分娩台の上にいた。そしてついに新しい命が誕生した。だがその瞬間、彼女の両足の間から人影が現れた…そう、法子だ。恐怖のあまり凍りつく美里。そして彼女はそのまま息を引き取った…。
 すべては終わった。門の先へ進む法子の背中にイズコの言葉が響く。「お逝きなさい」。
第二死つながり46:04
  車のトランクの中から一人の少女が遺体で発見された。彼女の名前は未来。気がつくと彼女は“怨みの門”の前に立っていた。しかしまだ自分が置かれている状況が飲み込めないようである。「ナンちゃんに会いたい…」。生きていた頃に恋人だった南を想い、ふとつぶやく未来。そんな彼女にイズコは「自分の身に何が起こったのか、その目で確かめてくればいい」と語る。
 そんな彼女の記憶−−。孤独だった彼女に温かい声をかけてくれた青年・南。いつしか二人は恋に落ち、幸せな日々を過ごしていた。ある日、未来は南の知り合いだという双子の兄弟・ジョージとジョータを紹介される。だが、それはすべて最初から仕組まれていた罠だった。悪魔のような本性をあらわしたジョージとジョータに虐待を受け、ついに未来は命を落としてしまう。
 そして死体となった彼女を車のトランクに捨てたのは、ほかならぬ南であった…。
 未来はすべてを思い出した。そこへ新たな死者がやってくる。なんとそれは南だった。罪の意識にさいなまれた彼が「すべてを警察に話す」と言ったところ、逆上したジョータにナイフで刺されたのだ。
 皮肉な再会にもかかわらず、喜ぶ未来。「天国に行ってナンちゃんとやり直す」。だが南は違った。「オレ、おまえの命を奪ったあいつらだけはどうしても許せない」。彼のその決意に未来も覚悟を決める。
 そうして兄弟に復讐をはたした二人。どこかその表情は晴れやかだ。イズコが言う。「あなたたちがこれから行く場所は、永遠に苦痛の続く再生のない地獄。過去も未来もないわ…」。未来が答える。「大丈夫。たとえどんなに苦しくても」。
 すべては終わった。手をつなぎ、門の先へ進む二人の背中にイズコの言葉が響く。「お逝きなさい」。
第三死HERO45:52
  「助けて」。夜の地下道に響く叫び声。一人の女性が今にも暴漢に襲われそうになっていた。偶然通りかかった若者・村田はその声を聞き、無我夢中で飛び込む。暴漢ともみ合う村田。だが、ふと気がつくと彼の胸には一本のナイフが突き刺さっていた…。
 村田は“怨みの門”の前に立っていた。「僕が…殺された?」なかなか状況が把握できない村田。だが現世では、自分の命を犠牲にしてまで仁美を救ったとして、彼は英雄的な扱いを受けていた。
 ところが同時に彼には盗撮癖があったことも発覚し、一転して世間からはバッシングの対象となってしまう。「僕なんか何の役にも立たない。地獄に堕ちた方がいいんだ」。さえない日常の記憶ばかりが思い出され、激しく後悔する村田。そんな自分に嫌気がさしていたあの夜、暴漢に襲われる仁美に出会ったのだ…。
 仁美のことが気になった村田は、しばらく彼女の周りをさまようことにするが、仁美の本当の姿を見るにつれ、がく然とする。「やっぱり僕はダメ男でした。死んでも彼女の役には立てませんでした…」。そう嘆く村田にイズコは「人間、みんな少しは歪んでいる。ダメなところがあっても不思議じゃないわ」と語りかける。その言葉に慰められた村田は、最後に仁美へささやかなメッセージを残し、再生の道を選ぶのだった。
 すべては終わった。門の先へ進む村田の背中にイズコの言葉が響く。「お生きなさい」。
第四死逆転45:52
  私立女子高の転校生・木下はある日、同じクラスのイジメられっ子である奥田をかばったことから、新たなイジメのターゲットになってしまう。度重なる陰湿なイジメに復讐するために、奥田の手を借り自らの意志で“怨みの門”にやってきた木下。だが、そんな彼女にイズコはどこか冷たい。そして、ついに木下の復讐がイジメグループに忍び寄る。「私が死んだのは、あなたたちを呪い殺すため…」。
 すっかりおびえたイジメグループは、奥田に助けを求める。「逆転だね。ザマアミロ」。しかし、残された彼女は逆転した立場に歓びを見い出していた。そんな彼女の様子を見た木下はがく然とする。「あたしが死んだおかげで、楽しんでる…」。
 プールで泳ぐ奥田を何者かが水中に引きずりこむ。木下だ。「裏切り者。人を殺しといて、何やってんの」。しかし、イズコの言葉が木下の頭に浮かぶ。「殺してくれと頼んだのはあなたよ。生きているあの子に嫉妬するなんて勝手じゃない」。
 翌日、約束通り屋上から飛び下りようとする奥田だったが、どうしても出来ない。「どうして一緒に生きられなかったんだろう…ごめんね」。涙を流す奥田。その時、木下からメールが入った。「それでいいんだよ」。
 自分の行ないを後悔し、あらためて再生の道を選ぶ木下にイズコが語りかける。「人間は生まれてくることを選べないけど、死ぬことも選んじゃいけないの」。 すべては終わった。門の先へ進む木下の背中にイズコの言葉が響く。「お生きなさい」。
84302 スカイハイ 5〜7
第五死ROOM50345:38
  「私、急いでるんです。約束があるの、彼と。今日はバレンタインデーだから…」。自分が死んだことに気づかず“怨みの門”へとやってきた看護婦・幸恵。では、なぜ彼女は殺されなければならなかったのか。
 知人の結婚パーティーで知り合った幸恵と寅彦。ほどなく二人は恋に堕ち、そして互いの素性を隠したまま逢瀬を重ねるようになる。単調な日常がまるでバラ色になったかのように、歓びに満ちあふれ、夢中で互いを求め合う二人。だが、その幸せも長くは続かなかった。
 ある日、幸恵は勤務先の病院で寅彦の本当の姿を知る。かつぎ込まれた急患は、ある大企業の取締役であり、同時に寅彦の兄であった。彼はその会社の専務だったのである。会社の側近たちの寅彦に対する心ない言葉を聞いた幸恵は、バレンタインデーに彼を呼び出し本当の自分を打ち明ける。「人生なんか変えようと思えば変えられるはず…会社なんか捨てて、私と一緒に生きていかない? 私、あなたと結婚したいのよ」。「はっきり言えよ。カネが目当てなんだろ」。冷たく言い放つ寅彦。「…だったらちょうだいよ。もう二度と逢わないから」。最後まで彼女のことを信じられなかった寅彦は、逆上のあまり幸恵の首を絞め、殺してしまう。
 「愛していたのに…」。怨みの記憶が甦った幸恵は寅彦に復讐すべく現世に舞い戻るが、自暴自棄になった彼は自殺を計ろうとする。そこで偶然、幸恵が渡そうとしたプレゼントを見つけ、彼女の住んでいた部屋へと向かう。
 「寅彦…あなたと歩くと、街が輝きだしたわ…どこにいても、きっと私たちは結ばれ合っている…」。偽りのない彼女の気持ちを知った寅彦は、幸恵の亡骸を抱えたまま号泣するのだった…。
 「わたしの恋は終わったの。生まれ変わっても自分が幸せだったことは忘れないわ」。最後にそう言い、幸恵は再生の道を選ぶのであった。
 すべては終わった。門の先へ進む幸恵の背中にイズコの言葉が響く。「お生きなさい」。
第六死pigeon house46:06
  多額の負債を抱えた社長の自殺に巻き込まれ“怨みの門”にやってきた羽田出版の警備員・井崎。「社長が死んで、これからウチの会社はどうなるんだ…」。40年間会社を守り続けてきた井崎は、自分のことよりも会社のことが気になって仕方がない。
 しかし、そんな彼が愛していた会社は、社長の死後、大きく変わろうとしていた。経営不振を立て直すべく、編集部員の一人である洋子が提案したのは、なんと風俗雑誌の創刊。これには社長の後を引き継いだ加代子も絶句する。井崎はイズコに言う。「やっぱり、ウチは…私がいないといけないんです」。
 ところが、洋子たちが立ち上げた風俗誌は大ヒットを記録。一度は会社を去った部員たちも再び集まり、にわかに社内は活気を取り戻す。そんな洋子たちの奮闘で会社の経営は盛り返したかに見えた。
 だが、加代子は突然、社員たちの目の前で風俗誌の出版を取り止めると宣言する。現実をまったく無視した彼女の方針にあきれ、今度こそ退職する者が続出。洋子もその一人だった…。
 案の定、会社はそのまま倒産してしまう。一度は再生の道を選びかけた井崎だったが、何度となく放たれても元の場所に戻ってくる鳩たちの姿を見て、現世に留まり永遠に彷徨う選択をするのであった。
「これがお前たちの、選択か…」。
 すべては終わった。門の先へ進む井崎の背中にイズコの言葉が響く。「お行きなさい」。
第七死a song45:53
  ある事故をきっかけに、二年間の昏睡状態を経て“怨みの門”へとやって来たミュージシャン・リョータ。彼は自分のパートナーだったコージがどうなったのか、とイズコに尋ねる。「そんなに知りたいなら見てくれば?ただし、何があっても驚かないようにね…」。
 現世を訪れたリョータが見たものは、彼の死後に大ブレイクし今やカリスマ的人気を誇るコージと、彼の婚約者である、かつてのリョータの恋人・美紗緒の姿だった。自分が眠っていた間の、周囲のあまりの変わりぶりに驚くリョータ。だがイズコは「あなたの死には、怨みの匂いがする…」と、さらに彼の記憶を引き出す。
 コージとの運命的な出会い、ライブハウスでのさまざまな出来事…。コージの類い稀なる才能と音楽に対するストイックな姿勢は、リョータにとって大きな憧れだったが、次第にそれは嫉妬の対象に変わっていった。そして、あるオーディションに向かう途中、コージからコンビ解消を言い渡されたリョータは一瞬の動揺からハンドルを誤り、壁に激突したのだった。
 「あいつはオレを見殺しにした。オレはあいつの踏み台だったのか」。すべてを思い出したリョータは、復讐をすべくコージのもとへ向かう。しかし、そこで思いも寄らない彼の苦悩を目の当たりにする。そしてリョータの死と共に自分の中の封印を解き、彼に捧げた曲をテレビで歌うコージ。「もし、あいつがいなかったら、今ここにオレは立っていなかったかもしれません。遠い空の彼方に逝ってしまったリョータのためだけに歌います」。 残されたコージの本当の気持ちを知ったリョータは、自らの死を受け入れイズコに告げる。「オレ、あんたに会えてよかった。今度生まれ変わったら、必ずてっぺん立ってみせるから」。
 すべては終わった。門の先へ進むリョータの背中にイズコの言葉が響く。「お生きなさい」。
84303 スカイハイ 8〜10
第八死Face(前編)45:54
  「そうだ。お前の“選択”の時だ」。門の主からそう告げられたイズコは戸惑う。「でも、私にはまだ分からない…私がどこで何をして生きていたのか。そしてなぜここに来たのか…」。
 その時、一人の少女が“怨みの門”へとやってきた。彼女の名前は杏奈。イズコは彼女の“怨みの記憶”をたどろうとするが、彼女の心は闇に包まれ何も見えない。「どういうこと? どうして何も見えないの…」。
 しかし彼女の心の扉を開き、魂を導けば自分自身の記憶を取り戻せると門の主に言われたイズコは、杏奈の代わりに自ら現世に降り立つことに。
 現世に降りたイズコと最初に出会ったのは、ほかならぬ小吉だった。だが、大吉をはじめ他の人間には彼女の姿が見えないようだ。その時、小吉たちの目の前で一人の女性が車にはねられた。「ごめんね…杏奈…」。
 彼女は杏奈の母親・京子だった。イズコは小吉に頼み、病院に駆けつけた刑事・喜多嶋と恩田にそのことを伝える。単なる自殺未遂と片付けようとする恩田だが、小吉の言葉がひっかかる喜多嶋は、恩田を連れて京子の実家へ向かう。そこで二人が見たものは、物置に隠された首のない少女の死体だった…。
 イズコは再び小吉に頼み、京子が車に飛び込む寸前、人形を持ったまま一軒の家の前に立っていたことを喜多嶋に伝える。その家とは、今をときめく人気小説家・東賢の家だった。東に京子のことを話す喜多嶋。だが東は心当たりがないと言う…。
 首なし死体の鑑定結果が出た。それはやはり京子の娘・杏奈だった。調べによれば杏奈は10年も前から引きこもり生活を続けていたらしい。
 再び京子の実家を訪ねる喜多嶋と恩田。そこには京子の祖父・耕造がいた。二人は耕造から、杏奈の父親は実の父親ではない、と聞かされる。
 ふとよみがえる杏奈の記憶。「お前はオレの娘なんかじゃない…どこか知らない男の子供なんだよ!」義父である保の心ない言葉、罵りあう京子と保、そして引きこもり続けた日々…。「分からない…ホントにもう分からない…」。首を振り、また心を閉ざす杏奈。
 その頃、現世では事件に新しい展開が。なんと保が死体で発見されたのである。はたして彼を、そして杏奈を殺したのはいったい誰なのか?
「彼女が魂の選択を出来なければ、お前自身の魂も消えてなくなる…それが“怨みの門”の掟だ」。「そんな…」。門の主の言葉に動揺するイズコだが…。
第九死Face(中編)45:14
  少しずつ記憶を取り戻しているものの、依然として心を閉じたままの杏奈。だが、彼女が魂の選択を出来なければイズコの魂も消えてしまう。イズコ自身もまた“選択の時”を迫られているのだった。
 イズコの導きで喜多嶋を訪ねる小吉。その手には東の作品『フェイス』が。なんと著者近影の写真に、京子が持っていた西洋人形が写っていたのだ。すぐさま喜多嶋は恩田と共に東のところに向かう。
「先生、正直に話してくれませんか」。重い口を開き、東が真相を語り出す。「確かに私は昔、その女性とつき合っていたことがあります…」。20年前の出会い、二人で過ごした楽しい日々、そして突然の別れ…。
 さらにDNA鑑定の結果、杏奈は東の娘であることが判明する。その事実を知り、驚愕する東。「なぜだ…なぜ京子は何も言ってくれなかったんだろう…」。
 そして杏奈もまた真実を知り、動揺する。「あの人が本当の父親なら、何で今まで私とお母さんのこと放っておいたの? 私とお母さんがあんなに苦しんでたのに、どうして助けてくれなかったのよ!」
 京子の容態が急変した。だが医師たちの努力の甲斐なく、彼女は息を引き取ってしまう…。母を失った杏奈は「どうやら私、あの男を呪い殺さなきゃいけない気がしてきた」とイズコに言う。
 一方、東は文学賞授賞式の会場に乗り込んできた喜多嶋から京子の死を知らされる。そしてなんと多くのマスコミの前ですべてを告白する。京子、そして杏奈のこと。
「私は知りたい。娘がどんな顔をしていて、どんな人生を送っていたのか。そして出来ることなら、いまだ見つかっていない娘の頭部を探し出して供養してやりたい。それが今の私に出来る、唯一の罪滅ぼしなんです…」。
 京子を見送るため、杏奈と共に現世に降りるイズコ。しかし「あなたはどうしてあそこに来たの? あなたを殺したのは誰?」という杏奈の言葉に激しく動揺し、ついに自分の死の真相を知る。「私は生まれなかった…生まれる前に殺された…そうだったのね」。
第十死Face(後編)49:57
  「私は生まれなかった…生まれる前に殺された…そうだったのね」。ついに自分の出生の秘密を知るイズコ。だが、門の主は非情にも杏奈の選択を迫る。彼女が魂の選択を出来なければ、イズコ自身もまた消えてしまうのだ。
 一方、現世では東の発言が大きな波紋を呼んでいた。「死んだ者より、生きている家族のことを考えてやるべきじゃないのか」。厳しい口調で東を責める西村。「でもな、言わずにはいられなかったんだよ。俺は…あの娘の父親なんだ」。そうつぶやく東。
「自分はただ、杏奈さんを殺した人間を捕まえたい…そのために話を聞きたいだけなんです」。再度、東を訪ねる喜多嶋だったが、西村に追い返されてしまう。
 京子の葬儀から東が戻ると、富美子と共に実家に戻っていたはずの美香がいた。「お父さんがどうしてアンナって子にそんなにこだわるのか、分かる気がした。でも…死んだ娘への愛情の表し方って、他にもあるんじゃないかな…お父さんにしか出来ないようなことが」。そう言って彼女は一本の万年筆を父に渡す。
 喜多嶋と恩田が西村を問いただす。死んだ片桐の遺留品から西村の電話番号が出てきたのだ。「あなたは片桐を殺した」。しかし西村は、杏奈の父である東に強請をかけた片桐に金を渡しただけであった…。
「なんでこんなことになっちまったんだろうな、京子」。京子の遺骨を前に、過去を振り返りながら独白する耕造。家出した京子が妊娠していたこと、父親の名前は一切語ろうとしなかったこと、そして周囲の反対を押しきり杏奈を産んだこと…。「京子はがんばったさ…なのにお前はどうしてあんなふうになっちゃったんだ…」。その時、杏奈の記憶がよみがえった。そう、すべては不幸な偶然から起こった悲劇だった。そして杏奈の首を切り落としたのは、ほかならぬ耕造だったのだ。
 美香の言葉に励まされた東は鬼気迫る表情で小説を書き下ろしていた。「こんにちは、アンナ。僕はまだ君に会ったことがない。君の顔を見たことすらない。でも、僕は君のことをよく知っている気がする…」。その姿をじっと見守る杏奈。「私の一生を生んでいる…」。イズコがつぶやく。「この世には、怨みなんかより強い感情があった…」。
 なおも原稿を書き続ける東。だが、そこに現れたのはなんと耕造だった。「なぜそっとしておいてくれなかったんです。許しませんよ…」。その言葉と共に彼の凶刃が東の首筋へ振り下ろされる…。
「もっとちゃんと生きれば良かった。なんてもったいないことしたんだろう…。私は…再生する前にもう一度、生き直したい。私がここの門番になる」。そう言って杏奈はイズコの代わりになることを選択する。だが、そんな彼女の目の前に現れたのは、実の父・東であった。こみ上げてくる感情を必死に抑え、三つの選択を迫る杏奈。「ただ一つ、やり残したことがあるのです。娘を…アンナという娘をこの手で抱いてやることが出来なかった…」と悔やむ東。しかし“怨みの門”の掟により、杏奈は自分がその娘であると名乗ることは出来なかった。「娘さんを…愛してらしたのですね」。「当たり前です」。
 父のその言葉に杏奈は小さく「ありがとう」とささやき、彼の魂を導くのであった。
 そしてついにイズコの選択の時がきた。優しく語りかける杏奈。「今度はきっと現世で生まれる…みんなと同じように、生きることが出来る…」。
 すべては終わった。門の先へ進むイズコの背中に杏奈の言葉が響く。「さぁ…お生きなさい」。
 −−どこまでも青く澄んだ空にイズコの声が響く。
「人間なんて地球の塵…一生なんて儚い…でも、みんな必死で生きている…」。
84304 スカイハイ2 1〜4
第一死星に願いを45:58
第二死バロック45:59
第三死ジャッジメント45:59
第四死星に願いを45:59
84305 スカイハイ2 5〜8
第五死最後の恋45:59
第六死45:59
第七死タイムカプセル45:58
第八死予言45:59
84306 スカイハイ2 9
最終死宿命45:44